■■今回のあらすじ■■
二股していたミサキと恵のダブルブッキングの現場を元カノの香織に
目撃されてしまう亮。女性関係は複雑化しそうだったが恵が元彼と復縁し
亮はあっさりフラられてしまう。落ち込んでマンションへ帰ると香織がいた…
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■■STORY■■
恵にふられ傷心の俺の前へ現れた、元カノ香織。
「結構早かったね…あと1時間待って戻らなかったら帰ろうかと思ってた。」
「…どうしたの?」
何故ここに来たのだろう?
「ねぇ。中、入っていい?」
香織と別れて一年。
別れた時はほとんど言い訳すら聞いてもらえない状態で一方的にフラれた。
『どうしても人数足りない』合コンに参加してバレたのがきっかけ。
それ以前から、どこかかみ合わない日々が続き最後はあっけなかった。
この前の劇団の公演で再会して、俺が女と遊んでいる状況を知っていて。
なんのために?
入っていいかと聞かれればしょうがない。鍵をあけ中に入って電気を点けた
「入れよ…」
「ありがと。」
香織は部屋へ入り見回し
「変わってないね。この部屋。」
香織と知り合ったのは4年前だ。
うちの劇団の公演で人数が足りなくて他の劇団からヘルプで来たのが香織だった。
その当時の俺は女と遊びまくってた頃だったが香織の美しさに一目で夢中になった。
芝居に対して神聖なほどの熱意のある香織は、ちょっかい出してくる俺に対する印象は
悪かったようで全く相手にされてなかったが…
俺も色々あって芝居に打ち込むようになって、女遊びも止めて、それから香織は俺を
見る目が変わったようで、付き合いだしたのが3年前。
付き合いだしたきっかけは…よく思い出せないが…ほぼ半同棲状態になっていった。
「なんか飲む?」
「ん…飲むけど。どうせコーラしかないんでしょ?」
そう笑って、2年間すごしていた部屋のテーブルの香織の定位置に座った。
まるで時間が戻ったような錯覚すらする。
俺はグラス2つにコーラを注ぎテーブルに持っていった
「相変わらず料理してないでしょ?キッチンピカピカだもん。」
「うるせーな。料理のことなら、香織だって言えないだろ?」
「なにそれ?私の料理がヘタってこと!?」
何も答えないことにした。確かに料理はお世辞にも上手いとはいえなかったが。
それでも香織は初めて結婚まで考えていた女だった。
「玲ちゃんと和行君とこ、ずいぶん入り浸ってたんだって?」
「知ってんなら聞くなよ。玲とは連絡とってるんだろ?」
「うん。時々ごはん食べに行ったりね…」
関係が戻ったような会話をしていると勘違いしそうになるが…しかし核心に触れたい
「…新しい男と…別れたって…」
質問を無視し香織は立ち上がって窓際に行ってしまった。外を眺めて
「…あれ?ねぇ前にあった建物なくなった?駐車場になったんだ…
」
俺は両腕で香織と窓を囲い込んで香織の背後に立ちカーテンを閉めた。
逃げ場を失った香織は振り返り
「亮?ふざけてんの?冗談なら止めて…」
その言葉をさえぎるように香織の腕をつかみ唇を奪う
「やっ!…亮…ダメ!」
「ダメなら何んで、ここに来たんだよ!?」
言葉を失う香織をさらに強く抱きしめ唇を重ねる
「亮!あ…やっ!」
言葉は拒んでいるが身体は抵抗していない。
そもそも、どうでもいい男の部屋へ1人で来るタイプの女ではない。
そのまま香織を抱きかかえベッドへ向かう。
服を脱ぐのも脱がせるのも、もどかしいくらい激しく求めた
「あ…!やめて…んっ!」
軽い抵抗をしているが香織の身体は手が覚えている。なめらかな肌、程よく豊かな胸
ほっそりした長い手足。力を失い愛撫を受け入れていく…忘れられない身体
「はぁはぁ…うっ…あ!」
俺の目を見つめて
「私を…よごして…!」
そう言った。
香織の求めるものは何なのか、俺は恵にフラれた腹いせを香織にしたいのか
…複雑な感情に流されるまま激しい行為は終わった。
「亮…もう寝た?」
「…起きてるよ…」
「私ね…アメリカに行こうと思って…行くつもりなの…」
「えっ?」
「アメリカで仕事してみたいの。もっと芝居の勉強したくて…」
その後なんだか話し続けていたが色々疲れたせいで俺は眠ってしまった…
夜明け前。
香織は俺に気づかれないように帰り仕度をしている…気配がした。
ベッドの脇に置いてあった時計を取ろうとしている香織の手をつかむ
「帰るなよ。」
「ごめん。起こしちゃった?」
「今日1日ここで過ごせよ…」
「だめよ。仕事行かなきゃ。亮こそ今日仕事じゃないの?」
「おまえが休むんだったら今日休む。」
「もうっ!そんなこと言って…また来る…来ていいでしょ?」
「…ん。」
香織は部屋を出て行った。
カフェでお茶をしていた。相手はミサキ。
繊細なネックレスを弄ぶ手。首のホクロがセクシーだ。ミサキは俺を見つめて
「心ここにあらず…ってかんじね。」
「…え?あ〜!ごめん、ごめん。」
香織のことを思い出すと、つい考え込んでしまう。
そう言いながらミサキも今日は何かいつもとは雰囲気が違う気がした
「ミサキさんこそ、今日ちょっと違くない?」
「え?…そう?」
お互いなんとなく変な空気になってしまった。ミサキが
「今日はやめておく?なんかお互いノリ悪くなりそう…」
「…ま。こういう日もあるってことで。」
そのままHなしで解散してしまった。こんなことはミサキとは初めてだ。
夫とは2年セックスレス。俺の他にも遊んでる男はいる。
服もバッグもブランド物、使ってる香水もおそらく高級品だろう。
夫が他に女を作るくらいだから、夫は相当の収入があるか資産家なのか。
この程度にしかミサキのことは知らないが…
もっとも、ミサキの身内はハデに男遊びしていることなど知らないのだろう。
(俺とミサキさんの関係って変わってるよな…)
その足で帰ると部屋の前に香織がいた
「香織」
「お帰り。早かったね。」
「おまえ…来るんだったら連絡しろよ。」
「ブッキングしちゃう?その後どうなの?この前泣かせた子…」
「彼女とは別れ…そういう意味じゃなくて、おまえ待たせるからだろ?」
「ふ〜ん。あの子とは別れちゃったんだ。抱き合ってた人妻っぽいほうは?」
「…どうでも…いいだろ…おまえ何しに来たんだよ?」
「わびしい亮君のために料理でも作ってあげようかな〜なんて。」
やたら食材の入ったスーパーのレジ袋を持って見せている
「とにかく入れよ。」
(料理。いったい何食わせるつもりだ?)
部屋のテーブルの前でTVを見ながら料理の出来上がりを待つ。
香織のバッグの中で携帯の着信ランプが点滅するのが見えた
「おい!香織。携帯のランプ光ってるけど?」
キッチンの香織へ声をかけた
「……あー…いい、いい。ほっといて……あ。そうだ!」
香織はバッグから白いサボテン。一瞬そう見えた。それを出して
「ねぇ、携帯の充電器。借りていい?」
「いいけど…」
充電器のプラグをコンセントに差し込んで香織に手わたした
「これでいい?それよりさ…それってバイブ?」
「正解!携帯の充電器から充電するのよ。」
香織はバイブの小さい溝に充電器のコネクタを差し込んだ
「すげー。グッズも進化してるんだな。なぁ香織…これってアナル付き…だよな?」
「うん。そう!」
「おまえ…アナル全くダメだっただろ?目覚めちゃったの?」
「ちょっとね試してみようかなって思って。」
「え?まだ使ってないの?」
「亮と一緒に使おうと思って買ったばっかりだよ。あーそれより料理!」
キッチンに戻ってしまった。小一時間ほどして香織が運んできた料理を見る
「これ、なに?」
「見て分かんない?カルボナーラじゃない。」
言い切られた
(卵のそぼろのっけパスタとかじゃないの?)
など喉まで出かかった暴言は控える。
「ねぇサラダとかないの?」
「…お腹すいちゃった。食べようよ!」
(もう何も言うまい。我慢して食べよう…味わう前にのみこむ!)
色々聞きたいことはあった。男と別れた話はしないだろうが
「そういえば、この前アメリカ行くって話。もう決まってるの?」
「うん。高校の時の先輩でLAで仕事してる人がいて、しばらくお世話になる。」
「ふ〜ん。もう、そんなに話すすんでるんだ…」
フォークにパスタをからませようとしたら、そぼろが散乱して香織の顔に
ぶつかってしまった。一瞬2人で固まった
「!……ごめん。」
「ちょっと火通しすぎたね…」
(ちょっとどころか!って、これそういう問題か?)
芝居の話。ヘタな料理。1年前と変わりない香織の印象的な表情。
香織を取り戻せるような気がしてくる。だが香織は?
俺は別れてから半年は香織を待っていた。見かねたように玲から伝えられた
「香織ちゃん。新しい彼できたみたい。」
あきらめるしかない。街で香織と背格好の似た女を見かけると胸がざわついた。
そんな気持ちでこの1年過ごしていた。
新しい男とは別れた。そう言ってた。俺とヨリを戻したいのだろうか?
でもアメリカに行く気でいる。香織が何を考えているのか分からない。
苛立ちと期待がからみあう。
「いつまで、こっちにいるの?」
「…まだいつ出発するかまで決めてないけど。会社は月末で辞める。」
「ふーん。退職日まで日替わりで送別会よばれるんじゃないのか?」
「ねっ!もしかして。ヤキモチ?」
「べーつに…」
半分以上残してフォークを置いた
「もう、食べないの?…やっぱマズかったかな?」
「…いや…実は、さっき軽く外で食ってきたからさ。」
(本気でマズい!でもそれは言ってはいけない!)
「そうだ!カズの土産で日本酒があった。まだ開けてないんだ。飲む?」
「…うん。」
(アルコール消毒だ!)
アルコールが入ると芝居の話で盛り上がるが。
だんだん会話がとぎれがちになり…そのまま抱き合い激しく唇を吸い合う
ふたりでベッドへ横たわり互いにからみあい体が熱くなってくる…
以前、羞恥プレイ的な行為をした時のことを思い出した。
あの時も先導していたのは香織だった。
香織はガーターベルトにストッキング。ガーターベルトが見えないギリギリの
長さのタイトなミニスカート。そして下着はつけずに…
秋の終わりの夕暮れ時。
公園の池のわきのベンチに池に向かって2人で座り人目を気にしながら…
その時のことを香織に話しながらしてみたくなった。
愛撫をしながら服をはぎとり
「覚えてる?公園でしたこと。香織下着はいてなくてさ…」
息をはずませ、うなずく香織
「あの時も香織から、しようって言い出したよな?」
愛撫にうっとりした表情をしている。ゆっくり服を全てはぎとり、愛撫を焦らす
あの時は腕をなでるだけで香織は顔を上気させ激しくなりそうな息を殺していた
「どうだった?すごく感じてただろ?」
「う!…あっ」
「答えろよ…」
「はぁはぁ!感じてた…すごく!」
どんどん暗くなっていく公園で人知れず香織のスカートの中に手を入れ
ふとももの奥を手で探ると、そこはぐっしょり濡れていた。
「香織すごかったな…体が震えてさ…」
「んっ…あ!」
その時の行為を再現するようにトロトロになっている部分を指で弄ぶ
「指でクリいじってたら、すぐイッて…」
「ああっ!」
「あの後、俺の部屋でして、おまえ何度もイッてたな…」
「やぁっ!もう我慢できない…お願い!」
泣き叫ぶような声で俺にうったえた。
白くて消しゴムのような感触。旅行の携帯用の首枕に似た形。
ヴァギナに挿入する部分は普通のバイブと違い、うなだれた形でクリトリスを
刺激するベロの部分と一体化していて内側に細かいトゲがある。
そしてアナル挿入部分はポコポコした形状。サソリのしっぽのようだ。
俺はうなだれた形の先端から香織のヴァギナに挿入した
「う…」
香織の足がどんどん開く。うなだれた形に従うようにゆっくりと挿入して
ある地点を通りすぎるとスルッと埋まるように入ってしまった
「んんっ!」
体内に潜り込んだ物体がGスポットを刺激するのか満たされた表情をした…
俺はベッドの脇の引き出しからコンドームを取り出しアナル部に被せて
「亮。」
「ん?」
「ローション。私のバッグに入ってるから持ってきて…」
香織のバッグの中のローションはすぐ見つかった。
思わず香織をいじめ辱めたい衝動にかられた。部屋の明かりは間接照明の
スタンドを残して、あとは消し。そして部屋のカーテンを全開にした
「!やだっ…亮!カーテン閉めてよ!」
そんな香織の言葉は無視してローションを持ってベッドへ向かう
香織によりそって
「大丈夫だよ…この部屋10階だぜ。よっぽど覗く気のあるやつじゃなきゃ
見てない…それに覗かれてるほうが本当は興奮するんじゃないの?」
公園での出来事から香織には露出願望があるんじゃないかと思っていた。
ローションを手にとりバイブのアナル部とうつぶせにした香織のアナルに塗る
その間も香織は言葉では抵抗していた。甘く、つぶやくような声で
「お願い…カーテン閉めて…」
「だめ。興奮してるだろ?」
そしてゆっくりとアナルに一粒一粒挿入をはじめると
「んっ…う…ううっ…あ、はぁっはぁっ…」
意外にスルスル入り込んだ。ONボタンを押すと緑のランプが着いた。
他にボタンは4つあって、おそらくヴァギナとアナルのUPとDOWN
であろうことは理解できたが…香織が
「左のほう…」
左のUPボタンを押すと
「うっ!」
「こっちがヴァギナ?」
「んっ!そう…あっ…」
うつぶせで腰を浮かせ息をはずませている。UPのボタンを更に押してみた
「ああっ!」
どうやらボタンを押すと4段階で振動がUPするようだ。
時にDOWNさせたりUPしたり。気持ちよさそうに腰をうねらせている
「うぅっ…ねぇ、アナルもしてみて…」
「…大丈夫か?」
アナルに抵抗があったことは分かっていたのでさすがに不安になったが
「いいから!押して!」
右のUPボタンを1回押した
「ああっ!んんっ!うっう…」
シーツを手で握り締め何度も上体をのけぞらせるように動いている
「…どう?アナル…気持ちいい?」
「あっ!へん…変になりそうっ!」
ベッドは窓から見える配置にしてある。香織は窓に尻を向けている状態だ
「ほら。こうして…誰かが俺たちのしてること覗いているかもな。」
「やっ!ああっ!」
「好きなんだろ?人に見られるのが?」
言葉で攻めてバイブを押し当てるように動かす。
香織は背後を振り返り潤んだ瞳で見つめ俺の腕を強く握りしめ
「あっあっ…だめっ!」
腰を数回強く動かし、そしてゆっくりとその動きはおさまっていった。
ボタンをOFFにしてアナルに気を使いながらゆっくりと取り出す
「ん!んっ…ああっ!」
香織が切なそうな声をあげたので
「ごめん。痛かった?」
「……ううん。抜くときのほうが気持ち良かった…」
「もしかしてアナルのほう?」
「そう…」
グッズを適当にティッシュでくるんでその辺におき香織と向き合う形で寄り添って
抱きしめ背中を愛撫した。香織は体をびくつかせ
「あっ!」
よりいっそう敏感になっている。昔からそうだった一度イッても体が欲しがってる
そういう時愛撫すると異常なほど敏感になって何度も求めてくる。
焦らすように全身なでまわすと
「もう、ダメ。来て…お願い!」
香織を仰向けにして覆いかぶさり愛液でとろけている、そこへ入る
はじめは、ゆっくり。徐々に激しく体全体で動いた
香織の中は何度も強く収縮して、その度切ない声をあげ。そして最後に
「ううっ……あ!亮!」
俺の名前を叫んで果てていった…俺は我慢していた熱いもの脈打たせた…
「ねぇねぇ。このバイブってボタンのところにカバーつけてお風呂でも
できるんだよ。」
「ふ〜ん。」
バイブを眺める。香織が
「今度お風呂でしよっか?」
「…いいけど…」
「なーに?興味ないの?」
「そういうわけじゃないよ…」
今度…また香織は俺に会いに来るということになる。
香織はどういう気持ちなのか…しっくりこない気持ちで眠った。
翌朝、香織が携帯のチェックをしていて
「え!?あっバッテリー…」
携帯はバッテリー切れの音をさせていた
「どうかした?」
香織は真っ青な顔で
「どうしよう!彼が…死んじゃう!ねぇどうしよう?」
ほとんど錯乱状態で俺にうったえるような表情をしている
「落ち着けよ!何があったのか説明しないと分からないだろう?」
別れたはずの男を‘彼’と呼ぶ香織
「よく分かんない…今携帯のメール見たら自殺って文字があって
どうしよう?彼、死ぬ気なのかな?」
「文章全部読んだのか?」
「見てない!その前にバッテリー切れたんだもん!ねぇ!どうしよう!」
体を震わせ涙ぐんでいる香織。
この瞬間、香織の心は俺にはないことを思い知らされた
「俺の携帯使えよ!とりあえず電話してみろ!」
携帯を渡した。指を震わせながらも番号はしっかり押している
「だめ。通じてるけど、出ない!どうしよう?」
とうとう顔を手で覆って泣き出してしまった。
こんな香織を見たのは初めてだった。心が痛む。
10分ほどして俺の携帯が鳴った。知らない番号からだが、おそらく
「香織…この番号…」
香織は俺の携帯をひったくるようにとり
「もしもし!タケシ!?今どこ?…………そうなの?…泣いてなんかないよ!
………分かった。じゃ駅前で。……うん。じゃあ。」
携帯を俺に返し
「…なんか早とちりしたみたい…ごめん騒いじゃって…あの、帰るね。」
俺の部屋を出て行った。そして俺の部屋に来ることは2度となかった。
後日香織から手紙が来た
『忙しくて手紙の挨拶でごめんね。この前のことだけど
彼が自殺しそうな人を助けたらしくて、その時私がプレゼントした時計壊して
そのこと謝るメールだったの。大騒ぎして迷惑かけたね。
私には遠距離なんて絶対無理だと思って、それで彼に別れようって言ったの。
でも彼は別れないって言って、どうしていいのか分からなくてヤケになってた。
それで亮に会ってメチャクチャにされたかった。
でも彼が死んだと思ったら私も生きてる気がしなかった。
うぬぼれかもしれないけど。
もし亮が私に未練があったとしたら弄ぶようなことして、ごめんね。
1年前別れた時きちんと、さよならしてなかったよね。
言いにくいけど本当にさよならだね。芝居頑張ってね。応援してる!』
そして香織が日本を発つ日。俺は空港にこっそり見送りに来ていた。
劇団の練習日に玲が
「香織ちゃんの見送り。来週火曜の11時に行くけど。亮は来ないでよね!」
悪態をつきながらも出発時間を教えてくれた。
それぞれに別れの挨拶をしつつタケシとおぼしき男と目で見交し合っている香織。
(あれがタケシか!俺のほうがルックスは上じゃねーか!)
1年間。戻ってくるのを俺は待っていた。でも香織の中では終わっていたのだ。
早々に引き上げないと見送りの団体に見つかるので心の中で香織に別れをつげ
(本当にお別れだな香織。さよなら。)
誰にも見つからないように、その場を離れる。
ふいに香織と付き合いだしたきっかけを思い出した。
(芝居で悩んでた香織をなぐさめてからだった。こんな時思い出すか…)
重く切ない気分で電車を乗り継ぎ
(あーこんな時ミサキさんに慰められたいっ!)
乗り継ぎの通路でミサキに似た女が誰かを待つように携帯を見ながら立っていた
(あれ?ミサキさん?)
振り返って見てみる、やはりミサキだ!
(待ち合わせっぽいけど…ちょっとだけ)
一応気は使うが少しでもミサキと言葉を交わしたかった。ミサキに走りより
「ミサキさん!待ち合わせ?」
ミサキらしき女は怪訝そうな表情で俺を見る。その表情はただならなかった。
しかも首にあるはずのホクロがない!
(あれ?そっくりなんだけど…ミサキさんじゃない)
俺は本能的にヤバイ雰囲気を察知し
「…ごめんなさい。人違いでした。」
そう言って、その場を離れようとし数歩あるいたところで
「ちょっと待ちなさい!」
腕をつかまれた
「あなたいったい誰?」
俺のほうこそ聞きたい。この女誰だ?
* END *
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